からだの声と銀の鍼

世田谷区用賀の竹内鍼灸治療院/自然の摂理に身をゆだね、心とからだを銀の鍼で紡ぎます

夏休み

 お盆の時期ということで、旅行や帰省でお出かけの方も多いのではないでしょうか。当院は8月初旬に夏休みをいただき、北海道旭川に帰省しました。

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いつもの風景 

 今年は母の十三回忌。実家の菩提寺で法要を行いました。ここのお寺には子どもの頃から祖母とよく通い、住職さんのお話を聞いたり振る舞われる食事を頂いたりした思い出があります。切り干し大根がとてもおいしくて必ずご飯をおかわり。実はその食事をめあてにばあちゃんにくっついてお寺のお供していたという・・・

 当時のお寺は建て替えられて、すっかり様変わりしていましたが、いつもお参りしていた弘法大師のお像はそのままでした。

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当時からお顔がよく見えなかった。でも修行中の凛としたお姿がとても強く印象に残っています。

 4日間の短い滞在でしたが、なぜか成り行きで父とトロッコに乗ったり。

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 北海道美深町トロッコ王国

 故郷のよさは、遠く離れて時を経るほどにしみじみと心に沁み渡ります。

 

東京世田谷区用賀/東急田園都市線 用賀駅徒歩4分

脈診経絡治療 竹内鍼灸治療院

 

 

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治療家の手

 よく患者さんから「先生の手はやわらかくて温かいですね」と言われます。ちょっとうれしい。なぜかというと、そういう手をつくってきたからです。普段の私は冷えもありますし、家事仕事もやってますからどちらかというと生活感あふれる手です。でも鍼を持ち患者さんに触れるときは確実に手が変わります。鍼は気を流す道具です。鍼は私の指先と一体となり患者さんの体表にあるツボを出入り口として経絡に気を流します。四千年の叡智である東洋哲学の源流を汲み、古典鍼灸に基づいた手法で行う鍼灸術だからこそ、私の手も治療家としての手に変化するのだと思います。

 とはいっても、私もはじめからこのような手を意識していたのではありません。鍼灸師を目指す前、私はアロマセラピストという肩書きで活動をしていました。他にもハーブ、フラワーレメディーなどいわゆる自然療法のお伝えなども行っていました。アロマセラピストとしては地域ケアセンターでベビーマッサージの講師活動、小中学校でアロマ講習会などを開催しました。また病院内で医師の許可のもと、重症心身障害や肢体不自由をお持ちの成人やお子さんたちのアロマオイルケア(マッサージ)のボランティアに参加していました。人の体に手を触れるという行為が、お互いの心身にどれほどの影響力をもたらすかということをこの期間に十分体得したのですが、同時にもっと体系的に人体について学ばなければならないとの思いが強くなりました。それには学問、技術の一定の水準を示す国家資格の取得が必要であると考え、鍼灸あん摩マッサージ指圧師の資格取得を志しました。

 その後、経絡治療に出会い、鍼灸学校在学中から現在の学術団体に所属して長年学びを深めてきました。とはいっても、鍼灸学校を卒業したての頃はすぐに鍼で患者さんを治療できる技術も機会もほとんどありません。私の場合、鍼の勉強は続けながら訪問マッサージの会社でパートとして働き始めました。高齢の寝たきりの患者さんや脳血管障害による後遺症で麻痺のある方を担当することが多く、マッサージは極めて慎重に行わなければなりません。リラクゼーションやリフレッシュを求めた強い圧や関節の曲げ伸ばしは大変危険です。指先と手掌に全神経を集中させ必要な部位に適切な施術を行わなければ効果は期待できません。有資格者として責任と緊張感をもって治療にあたりましたが、やはりここでも一番大切なのは患者さんの肌への触れ方でした。そして傾聴とお声かけ。私がはり灸専門として治療に専念するため会社を辞めることになったときに「竹内さんじゃないと…」と言ってくださった患者さんには申し訳ない思いとともに感謝の気持ちでいっぱいでした。

 こうして治療家としての手を意識するようになって改めて鍼を持つと、気を受け流す媒体としての鍼が自分の手と一体となることを実感できるようになりました。鍼をしているときに患者さんが「今、お灸ですか?」と尋ねらることがあります。金属の鍼がお灸のように温かく感じられるのです。また、わずかに鍼先を肌に接触しているだけでも「体の奥に鍼が入っていく感じがします」とおっしゃる方もいます。鍼で気血が補われ、変化が起こるとそのような感覚を得る場合があります。事前に説明をしているわけではないので患者さんからの言葉を聞くと鍼の効果が伝わっていることを共有することができます。

 鍼技術の修練はここまでということがなく、一生涯が勉強といえます。そして少なからずこれまでの私の鍼灸師以外の経験も今の治療に役に立っているのではないかと思っています。

 

 この本は青木愛子さんというアイヌお産おばあちゃんの伝承と知恵を記録した本です。

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アイヌお産ばあちゃんのウパシクマ―伝承の知恵の記録

アマゾンから

商品の説明

青木愛子はアイヌコタンに代々続いた産婆の家に生まれ、古代から継承されて来た産婆術(イコインカル)、診察・治療のための特殊な掌、薬草、整体手技、あるいはシャーマンとしての技量をも駆使して、地域住民の心身健康の守り役、相談役として活躍した。本書は十年にわたって愛子の施療の実際を見て、その言葉の一つ一つを丹念に記録した、アイヌの信仰と文化の実態に迫る伝承の知恵の書。

                                 

本書の愛子おばあちゃんの手と私の手を比較。似てませんか?

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プチ断食と申梅(さるうめ)3

 成田山の断食修行はもう随分まえのことですが、こうしてブログを書いているといろいろなことが思い出されます。私の修行2日目だったでしょうか。ひとりの入堂者がやってきました。一目見るなり、「あの~降りる駅間違えてません?ここ、成田空港駅じゃないですよ?」と声をかけたくなるほどのリゾート感満載のど派手な若い女の子。受け答えもあのお世話係さんですら困惑するほどの天然っぷり。当然、様々な注意を受けるのですが妙なかわし方でお世話係さんを苦笑いさせ、とうとう気に入られてしまいました。そして彼女の素性に度肝を抜かされます。聞けば有名大学の法学部の学生。偏差値でいうと75以上。現在、秋葉原メイド喫茶でアルバイト中とのことでした。当時はメイド喫茶が大盛況の頃で、華奢でかわいらしいお顔の彼女から聞くメイドさんのお仕事内容に興味津々。お勤めはメイド喫茶の中でも人気店で、採用もかなりの倍率だそう。仕事の日はまず事務所に行き、それから専用のワゴン車に乗って美容院へ行き、ヘアメイクを施されるそうです。他店の引き抜きあり、独特な世界の知らない話ばかりで修行も忘れ聞き入ってしまいました。しかし彼女の凄さはその程度ではありません。なんと大学に入る前は寮付きのパチンコ店で住み込みで働いていたというのです。なんでも高校卒業後、特にしたいこともなく実家でブラブラしていたそうで、ある日ふとひとり暮しがしたいと思い僅かな荷物を持って家を出たそうです。はじめは友達の家を転々とし、それから京都に行って行き当たりばったりで見つけたパチンコ店に住み込みで働き始めたというのです。家族の話を聞くと割と裕福そうなおうちで、仲もよく、言ってみれば家族公認の家出のような感じ。パチンコ店でしばらく働くうちに、大学に行きたいと思うようになり、翌年予備校へ1年通って現在の大学に入学したそうです。

 今頃、彼女はどうしているのでしょうか。司法試験はなんなく突破したに違いありません。しみじみ思うのですが、こういう人物が閉塞的な社会を動かし、軽やかに世の中を渡ってゆくのでしょう。こだわりなく今を生きている彼女が本当にまぶしく、清々しく私の目にうつりました。

 こうして面白い人たちとの出会いもあり、無事に5泊6日の断食を終えたのでした。今回のプチ断食もそうですが、実は断食中はあまり空腹を感じません。覚悟して自らの意志で食を絶っているからなのか、あくまで期間限定でいずれは食事にありつけると知っているからなのでしょうか。そう考えると、海や山で遭難したり食糧危機に直面した時に感じる飢餓とは本質的に違うような気もします。私はなぜか子どもの頃から遭難のニュースにいつも関心を寄せていました。「山菜取りに山へ入ったおばあさんが5日後に無事見つかって、そのあいだ沢の水とみみずを食べて過ごしていた」なんてニュースに釘付けになるような子どもでした。実は私、昔からみみずが大の苦手で、何故かカタカナで”みみず”と書くことが怖くてできないのです。実家にあった百科事典は「み」のページが開けませんでした。なぜならうっかりヤツの見開きページの写真を見てしまうかも知れないからです。子どもの頃、姉がそのことを知っていて嫌がらせで私に見せようとする程でした。みみずさんがどれだけ地球環境に貢献している偉大な生き物だということは重々承知しているのですが、でもダメなのです。なので子どもの私はいつも友達にこんな質問をしていました。「もし山で遭難したらみみず食べられる?」

 よくわかりませんが、子ども心にも生死の境に近づく恐怖を、現実の恐怖と照らしてハカリにかけていたのでしょうか。断食後に何が変わったかといえば、味覚や五感、とくに嗅覚が鋭くなった感じはありました。でもそれはずっと続くわけではありません。精神的な強さも『やればできる』という程度かな。ですが、2、3日の断食でもそのあとにゆっくりと噛みしめて摂る食事の味わい深さは格別です。

 写真は雑穀米と梅干。何種類かの雑穀を口に入れると「これはキビ、これはハト麦…」と一粒一粒の違いが感じられます。何十回と咬んで、喉、食道、胃と想像しながら飲み込むと体と食物の一体感が湧いてきます。梅干は友人から頂いた「申梅(さるうめ)」です。申年に採れた梅は申梅と呼ばれ、とても縁起が良いとされています。その由来は、平安時代、疫病に苦しむ人々を当時の天皇が梅を使って救い、自らの病も梅干によって回復したそうで、それが申年だったということです。のちの時代でも感染症飢饉が起きたときに申梅の言い伝えが残る地方では、多くの人が難を逃れたということです。こちらの申梅は徳島県産で、わずかしか採れない貴重な梅だそうです。ありがたく有難くいただきました。そして断食明けの食事は、このような少量でもお腹は満たされ腸が動きだします。で、「宿便」のお出ましとなるのです。プチ断食、おすすめですよ!

 

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脈診経絡治療 竹内鍼灸治療院

プチ断食と申梅(さるうめ)2

3日目。猛烈な頭痛と眠気がやってきました。その原因は、食物が体に入ってこなくなると体はエネルギー源となるケトン体の生成を始めるのですが、脳はケトン体の働きに慣れていないため拒絶反応として頭痛が起こるそうです。もうひとつの理由は、脳の唯一の栄養素である糖の不足で低血糖に陥るためと考えられています。これが眠気や疲労感も引き起こすのです。

 1日、2日目までは断食修行者が参加できる写経や真言密教の瞑想法である密教座禅を体験して楽しく修行ライフを満喫していました。しかし、今や階段一段昇るのさえ手すりにつかまり、重力との闘いのごとく重い体を引きずり移動しなくてはなりません。いや大げさでなく。ふざけているのかと叱られるくらいスローな歩みでしか進めないのです。毎朝6時から始まる成田山新勝寺の御護摩祈祷に参拝するのが日課ですが、大本堂までの石段を山頂目指すかのようにゼーハーゼーハー言いながら這い登ります。護摩祈祷が厳かに始まり、しばらくして全身を貫くような大太鼓が鳴り響きます。太鼓がリズミカルに打ち鳴らされる中、護摩木が次々と焚かれます。立ち上る炎を仰いで一心不乱にご真言を唱えると、まさにお不動様のお姿が浮かび上がるかのような錯覚を覚えます。朦朧とした意識で炎と太鼓の響きに包まれながら真言を唱える。まさにトランス状態。

 昼間は相変わらず眠気との闘いです。私は夜の睡眠のために日中は寝ないと決めて、どんなに横たわりたくても布団は敷かず(寝るのは自由です)、ひたすら成田山の境内の中をさまよっておりました。人間って歩きながらも寝られるのですね。危険人物通報レベルです。

 私が年功序列で女子部屋の主になると、毎度新入りさんが来てぼやく、お世話係りさんに「怒られた―」「こわい~」の言葉に笑ってしまうのでした。もちろんみんな規則を破るつもりなどなく、単なる勘違いだったり、うっかり軽口を叩いてこっぴどく叱られるというパターン。ですが、その頃にやっと私はお世話係りさんの厳しさが納得できるようになりました。たとえうっかりだったとしても、その軽はずみな行動や心の持ち方が、のちに肉体の変調をむかえる時に精神の弱さとして壁になるのではないかと思ったのです。まあ、5泊6日くらいの私が言うのもちょっと大げさですが。ただ、もしも断食中に規則違反を犯す不届きな人がいた場合、真面目に取り組んでいる者にどれだけの迷惑を及ぼすかは容易に察しがつきます。まず気力が萎えることは間違いありません。

 5日目を過ぎる頃。ざわついていた気持ちの乱れも落ち着き、体がすっきりと軽く感じられるようになってきました。朝の御護摩祈祷の御真言も雑念なく唱えられるようになりました。つづく。

 

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脈診経絡治療 竹内鍼灸治療院

プチ断食と申梅(さるうめ)1

 週末、プチ断食をしてました。治療院開業以来、夕飯を食べる時間が以前より遅くなり、しかも寝るまでの時間が短いという悪循環がたたり、いろいろとまずいことになっているのを自覚していた昨今。「うーん、本格的なダイエットに入る前に、まずはデトックスから始めるか」ということで2日間、水だけで過ごしておりました。プチ断食はいいのですが、本格的なダイエットとやらは成功する気がしないという、全くもって意志の弱い私。そんな私ですが、以前に結構ハードな断食を行ったことがあるのです。

 鍼灸学校に通っていた頃のことです。2年生の春休み、4月から3年に進級し、いよいよ国家試験まであと1年。気合を入れ精神に喝!ということで、断食修行に挑戦することにしました。修行場所は成田山新勝寺の境内にある参籠(さんろう)道場。期間は2泊3日から6泊7日まで選べるのですが、参籠道場での断食修行が初めての場合は7日間は申し込めません。ということで、私は初心者が選択できる最長の5泊6日に挑みました。 

 断食ができるところは全国にありますが、ここの断食道場はその中でもかなりストイックな位置付けではないかと思われます。他のところも調べたのですが、断食中でも野菜ジュースがでたり、リラクゼーション施設が整っている場所もあります。しかし、成田山では、断食中に口にできるのは水のみ。小さなアルミの急須と湯のみを渡されて、道場の水道水(井戸水らしい)しか飲んではいけません。携帯、電子機器は持ち込み禁止。家を出るときから携帯を所持することは許されないという決まりです。私が入室の手続きをしているときにもう一人参加者がやってきたのですが、その人は勘違いをしていたらしく修行に入る前に携帯を預ければよいと思っていたようです。そのことが明らかになった途端、お世話係りの方(お坊さんではない)にものすごい勢いで怒られ、今すぐ帰りなさい!という流れになったのですが、その人はとにかく平謝りを繰り返し、やっと参加を許されていました。その時の光景があまりに強烈で、大人になってあんなに怒られるなんて……と私まで震え上がりました。他にも禁止事項はいくつもありますが、あの怒られかたを見てしまった日には「絶対にルールは守りますから!!」という心境でした。

 道場の女子部屋に案内されると、先住の方が数人いました。一人はこんもりと布団をかぶって寝ていました。そしてもう一人は帰り支度をされていました。修行明けかな?と思っていたら、なんと具合が悪くなり断食を中止して帰るということでした。前日も同じように帰った人がいるということで、私がとてつもない不安に苛まれたのは言うまでもありません。寝ていた方がむっくりと起き上がり、まるで女子部屋の長老のごとく新参者の私に教えてくれました。早くて2日、だいたい3日目に身体中の苦痛が襲ってくると。『吐き気、猛烈な頭痛、体の節々の痛み、とにかく体が重い、歩くのもままならない、等々』そして昼間はひたすら眠くなるが、あまり寝ると夜が眠れなくなり、布団のなかで長い時間を悶々と苦しみに耐えることになる…… お、お、恐ろしい。

 ここは2泊3日から参加が可能ですが、できれば断食期間は3泊4日からがおすすめ。理由は3日目は体が最悪の状態なので帰路が大変つらくなります。しかし3日間が過ぎ、苦しみを乗り越えたあとには、体がスッキリと軽くなり、頭も冴えて五感も鋭敏になり新しい自分に生まれ変われるというのです。また最終日には回復食の重湯が頂けるのですが、3泊以上の断食者にしか振舞われません。苦行明けに頂けるありがたい重湯はぜひとも食したい。

 しかしである。5泊6日、前途多難……つづく。

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脈診経絡治療 竹内鍼灸治療院

診断即治療

東洋医学では「証に随って(したがって)治療する」随証療法を基本とします。経絡治療では西洋医学でいうところの診断を証決定と呼び、証決定をするための予備行為として、症状を五行に分類したり、十二経絡の変動を診たり、体質・病因などを考え合わせ、四診法をにより体を診察します。四診とは『望診(視覚)、聞診(聴覚・嗅覚)、問診(問いかけと応答)、切診(触覚・脈診)』などの五感を働かせて、病態を把握する方法です。このようにして導き出された主証は直ちに治療へと結びつきます。(診断即治療)主証が決定して実際の治療を行うには、どの経絡のツボにどのような施術をするのか、用いる鍼の選択は?手技手法は?と瞬時に判断します。来院した患者さんにお話を伺っているあいだ、私の頭の中はフル稼働してこれらの情報をまとめ上げているのです。

 

治療にあたっては治療原則というものがあります。専門的な用語になりますが「陰主陽従」「補法優先」「相剋調整」「片方刺し」「難経六十九難の法則」に基づきます。語句の説明はさておき意味を要約すると、陰陽五行論と難経(なんぎょう:東洋医学の原典、黄帝内経と並ぶ三大古典のひとつ)の法則に従って治療を行うということです。

 

「相剋調整」と「片方刺し」は、私が学んでいる流派の独特の治療法で、古典における不変の真理を貫きながら、時代、地域、環境条件の変容にあわせ実地臨床上に即して確立した手技手法です。片方刺しについて言えば、たとえば手首には太淵(たいえん)というツボがあります。太淵は左右の手首にありますが、両方の太淵に鍼をするのではなく、どちらか片方のみに鍼をするという手法です。経絡治療では陰陽バランスの偏りが病症の原因と考えます。手首の太淵を治療対象穴とする場合、気の巡りの旺盛な方を適応側とします。これは、気血の巡りの良い方に施術をした方が治療効果が高いからです。活発に働いている経絡のツボを使い、気血を全身に巡らせて自己治癒力を促します。

 

では左右のどちらを適応側とするか。通常は男性が左、女性は右とします。ただし男性でも症状が左に偏っている場合は巡りのよい右側に、女性でも症状の偏りをみて同様に判断します。性別でわけるのは、臓器や生理機能の違いで気血の巡りにも影響があるからです。それから、どちらの性も兼ねている方や見た目とは違う性の方もいらっしゃいます。その場合はご自身本来の性や性別だけに限らない様々な方法で治療を決定していきます。

 

また東洋医学においては五行論の基本元素である「木・火・土・金・水」と人体の相互関係を治療原則としていますが、やはり古代中国で確立したそのままの原則を現代人に当てはめるには無理があります。そこで経絡治療では「相剋調整」という独自の治療法則を考え出しました。(詳しくはまた今度) このように経絡治療というのは、二千年前の古典医学を土台としながら、おひとりおひとりに合わせて治療を施す、ダイナミックかつ繊細な治療といえます。そしてご紹介した内容は経絡治療のほんの一部。私も日々勉強の連続です。

 

伝統医術とは本当に奥深いものです。毎日の臨床で患者さんと接していますと、科学では説明がつかない(科学が追い付かない?)現象がたびたび起こります。まさに時空を超えて。そしてそれを患者さんと分かち合うことのできるこの仕事に私は生きがいを感じています。

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経絡治療に思うこと5

当院には様々なお悩みの方が訪れます。腰痛、肩こり、膝の痛み。頭痛や月経不順、慢性疲労、虚弱体質、様々な不定愁訴。赤ちゃんを望まれる方や逆子ちゃんも。心因性の症状や思春期に多く見られる体の不調。花粉症やアトピーなどのアレルギー症状。病院ではいくつもの専門外来に分れる症状ですが、鍼灸院は診断をするところではありませんので、どのような症状の方でも治療対象となります。もちろん外傷や感染症他、病院での加療が必要と思われる場合は、すみやかに適した医療機関を受診するようお伝えします。

 

皆さんが鍼灸院に足を運ぶ理由。「病院の検査結果では異常がなかった」「もう長いこと不調が続いているが、鍼灸で改善が望めるのなら」「マッサージや整体で楽になるのはその場限り」とお話しされる方が多くいらっしゃいます。では、あまたの鍼灸整骨院や整体等と経絡治療は何が違うのでしょうか。

 

経絡治療では陰陽五行説を根幹として治療方針を決定しています。陰陽五行説とは、宇宙の法則や自然の摂理を説いたものであり、私たち人間もその自然の一部であるという考え方です。五行というのは宇宙と大自然を構成する5つの基本物質のことをいい、その特性を『木・火・土・金・水』に当てはめます。なんとシンプルなのでしょう。

 

本来、人は生まれ落ちた環境に適応しながら、自分の特性を活かして働くことで、周囲と調和して今生の役割を発揮します。人の体にも自然界と同じように五行の特性があり、それらの調和がとれていれば、個人の健康も周りとの関係も調和が保たれると考えます。ですから心身の不調はそのバランスが崩れることによって起こります。身体は病気という手段で自分にメッセージを送っているのです。経絡治療では、陰陽五行の相互関係に不具合が生じたために、身体(五臓)に病変が現れるとみているので、五臓を経由する経絡を整えることで健康を取り戻すと考えます。経絡治療が様々な病症に対応出来るのは、病を検査の数字や局所の症状では診ていないからです。

 

私たちは具合が悪くなってはじめて自分の体に意識を向けます。この辛い状況をどうしたものか、と顕在意識が認識するまで全く気が付かないでのです。でも本当は、もっと前から身体は自分に何らかのサインを送っているはずです。分っていたけれど見て見ぬふりをしていたのかも知れません。病気はあるとき突然に現れるわけではありません。ちゃんと潜在意識の中では存在していたはずです。病気といえども、自分が作り出した産物なのです。

 

自分で作り出したものであれば、自分で取り除くことができる。

 

経絡治療は、患者さん自身の自己治癒力を高めることを最大の目的としています。体質、普段の生活や過去の生活習慣、症状の現れ方など、たくさんの情報から読み取った内容を陰陽五行に照らし合わせて治療をたてます。それがひとりひとりの本質を見極める手がかりとなります。本来の自分自身に還ることができれば、自分が作った病も自分で癒すことができる。鍼灸はそのお手伝いをしているだけなのです。

 

哲学者、神学者、医者でノーベル平和賞受賞のアルベルト・シュバイツァーはこう述べました。『すべての患者は、自分の中に医者を持っている』

 

そうなのです。医療に携わる私の役割は、患者さんが自分で治ろうとする力を最大限に発揮できるようにサポートすること。実はこの言葉、催眠療法を学ぶうえで、萩原先生が最も大切なこととしてお話しされた言葉のひとつでした。「催眠療法と経絡治療」手法は違いますが、きっと目指すところは同じなのではないでしょうか。

 

鍼灸は伝統医術です。科学的根拠を主張するにはあまりに心許ないと言わざる負えません。しかし人間の奥底には計り知れないほどの創造性があります。なぜならそれが宇宙と繋がっているからです。そのように東洋哲学では考えているのです。経絡治療を実践していると、その片鱗が垣間見えることがあります。そんなとき、私は患者さんとの気の交流を感じるとともに、大自然との一体を思わずにはいられません。

 

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脈診経絡治療 竹内鍼灸治療院